
【質問6】―――他の方にスズキ・メソードを勧めたいと思われますか?
もちろんです。理由はもう今までにお話したことの中に全部入ってるかと思うんですけど、もちろんこのような素晴らしいメソードですから。
そして、この素晴らしいっていうことについて、実は今日も家で夫婦で話してたんですけれども。
スズキ・メソードの本質、つまり、優れたものに接して、大家の演奏を繰り返し繰り返し聞いて、それをお手本にして自分も反復練習する、この鍛錬していくっていうプロセスが、勤勉な日本人の性格にとても合ってるんじゃないかなっていうことを、夫婦で話してたんですよ。
そう、日本人の特性ととてもマッチした教育法じゃないかって。
実際に日本人で、スズキで育って、世界に飛び立っていっている音楽家がたくさんいらっしゃることも、このことを証明してくれているかな、と思うんです。
なぜ我々夫婦がこのように考えるようになったかという理由ですが、海外のスズキ・メソードの夏期学校を経験したということがあると思います。娘がヴァイオリンをやるようになってから、私たちは家族で松本の夏期学校はもちろん何回も行きましたけれども、それだけでなく、たまたま知り合いからのお誘いもあったりして、アメリカとイギリスの夏期学校にも行ったことがあるんですね。
ただ、アメリカもイギリスもスズキ・メソードでやってるんですが、なんか味付けが違うって言うんでしょうかね、やっぱり日本のものとは違うんですよ。
―――どんなふうに印象が違うのでしょうか?
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やっぱり日本人ほど、本当に繰り返し繰り返しやってるのかなって思うんですよ。
―――たとえば演奏の仕上がり加減でしょうか?
そうですね。演奏の仕上がりもそうですし、多分日々の家でのお稽古やCDの聞かせ方、親の環境の作り方、そういうもの全部が違うんじゃないかなって思うんですけど。真面目で勤勉な日本人にはすごく合っているメソードかなって感じます。
同じ文化でも、それが根を下ろす土地が変わると、その文化は現地化するっていうのか。そんなことを肌で感じましたね。良い例かどうか分かりませんが、日本でできた巻き寿司がカリフォルニアに行くと海苔とご飯が逆さになったカリフォルニアロールになるじゃないですか。
ああいう感じで、何かこう、最初のものとはちょっと違った、現地化されたものができるっていう、それをやっぱりスズキでも感じたっていうことなんですけれど。
なので、私は、スズキの発祥の地であるこの日本で、日本人に合ったメソードで学べるということは、ものすごく価値のあることかなと思ってます。
―――とても新鮮な視点をありがとうございます。海外でもスズキ・メソードはすごく盛り上がっていて、今年のチェロ大会にお伺いしたとき、海外の先生か撮影されたビデオを見たら、先生も生徒も自信満々で、どんどん拡大します!っていう感じで。日本の教室もこの勢いで行ったらいいのになって思うぐらいでした。でも多分、取り組みのその緻密さっていうのは違うんでしょうね。スズキの本質の素晴らしさを100パーセント体感する、経験するのが日本の良さなら、発祥の地で学べるラッキーさを活かさない手はないってことですね。
【質問7】―――子どもの時の思い出について。ピアノ科の先輩後輩について覚えていることはありますか?
子どもの頃は、自分が所属していたその東海地区であったり、あるいは夏期学校に行って知ることのできた全国のお友達であったり、自分のちょっと先を行ってる先輩で、素敵な演奏をする人だなっていう人の演奏は全部頭の中に入っていて憧れていました。
今真っ先に浮かぶのは、子どもの夏期学校に一緒に行って、松本の夏期学校でヴァイオリンの伴奏してくださっていた臼井文代先生です。本当にいい音をしてらっしゃるなと思って、注目していたのですが、ある時、臼井先生が、会員向けの新聞だったか何かにお書きになっていた記事を読んで、いっそう尊敬するようになりました。
その記事の先生の素敵なお言葉をそのまま暗記しているわけではないので、私の言葉での要約になってしまって、その良さがどれほど伝わるかわからないのですけれども、書いてらしたことは、こんなことでした。
子どもの頃、音に命ありって聞かされて、一音一音に心を込めてっていう風に言われたけれども、小さい頃の自分には、その意味がよくわからなかった。
音はいっぱいあるし、ピアノなんか両手で音を鳴らしてるので、1つ1つ全部になんて気を配ってられないっていう風に思っていた。けれども、今、大人になって、汚い音をいっぱい並べてどうするの?と思うようになった。そういうことをお書きになっていたんです。
しかも、そういう内容を美しくスッキリとした文章にまとめられていて、その文章に惹かれました。そして、こんなふうに考えていらっしゃる方のピアノの音は、だからあんなに綺麗なんだなと、すごく納得をしたような気持ちで。いつか、思わぬ幸運がめぐってきて、臼井先生にピアノを聞いていただけることがあったら嬉しいなと思います。
―――「汚い音をいっぱい並べてどうするの?」という言葉、音楽と向き合う人皆さんの心に響くのではないでしょうか。美しい音を大切にする、スズキ・メソードの真髄に触れるエピソードですね。
相澤さんが臼井先生にピアノ演奏を聴いていただきたいという夢も、近いうちに叶うんじゃないでしょうか。そんな気がします。

【質問8】―――卒業生として、スズキに望むことはありますか?
私は今ちょうど働き盛りっていう時期にいるわけですけれども、そのあと高齢化する自分を少しずつ考えるようにはなってきています。
それで、その時には音楽ができる時間がもっと増えるだろうから、ピアノが弾けるということを最大限利用して楽しみを増やしていけるように、スズキ・メソードがこうあってくれると嬉しいなという、ちょっとした要望はあります。
具体的には、OBOG限定の登録サイトを作って、自分の弾ける楽器、合奏してみたい曲、住んでいる地域、どのくらいの頻度で合奏ができそうかなどの情報と連絡先を登録できるようにしておいて、合奏してみたい人同士が個々にメール等で連絡を取り合って集まって室内楽をやれるような基盤を提供していただけたら嬉しいです。
個人情報にあたるものも登録することになると思うので、セキュリティがしっかりしているということが重要で、その辺の管理が難しいかもしれないんですけれども、そのようなことがもし実現すれば、スズキの卒業生同士が繋がって室内楽を楽しめるようになって、楽しいだろうなと思います。
室内楽は、音楽を愛する良き市民の最終到達地点として鈴木先生が思い描いていらした形だということを、かつて豊田先生が夏期学校のときにお話ししていらっしゃいました。なので、たくさんの室内楽のグループができると、鈴木先生もお喜びになるのではないかと思います。
―――たしかにその仕組みはおもしろそうです。卒業後スズキから離れていた卒業生たちが、また故郷に帰ってきて新しく仲間と出会い、故郷自体も盛り上げるようなイメージですね。
読者の皆さまへ(グランドコンサート実行委員会よりお知らせ)
こうした未来につなげる一歩としても、今回のグランドコンサートにはご注目ください。
「奏でる人にかえろう」をコンセプトに、OBOGの皆さまへ、コンサートへの出演を提案しています。
グランドコンサートの象徴である壮大な響きの渦を創り出すためにも、一人でも多くの卒業生にご参加いただきたく、お待ちしております。(相澤さんのご主人の感想より、もう一度。)
グランドコンサートは会場で空気を感じることが重要!
―――それでは、あらためまして。相澤さん、本日は貴重なお話をたくさんありがとうございました。
どうもありがとうございました。