
フルート科卒業生の新山乃登花(にいやまのどか)さんは、大学を卒業して2年目の若きフルーティストです。子どもの頃から熱心にフルートに取り組み、スズキ・テンチルドレン(選抜された子どもたち10人による演奏ツアー)のメンバーとして日本各地での演奏会に出演するなど、充実した音楽経験を積みながら勉強も両立し、現在は薬剤師として活躍しています。
フルートは、美しい音色とシルバーやゴールドに輝く姿で広く知られ親しまれる楽器です。オーケストラや吹奏楽では大きな存在感を示し、フルート演奏が主役の名曲もたくさんあります。一方、高い認知度に比してフルートそのものについての理解は十分といえるほど浸透していない印象があります。
そこで、今回のインタビューでは「フルートの魅力と楽器特性」をテーマにお話していただきました。一般的に、管楽器は学校の吹奏楽をきっかけとする方が多いなか、スズキ・メソードで幼少期からフルートを学ぶ良さについてもお聞きしています。
【当インタビューを、とくに推奨したい方】
・音楽や楽器が好きな方
・これから楽器の練習を始めたいと考えている方(楽器選択を含め参考になる内容です)
【新山さんへの6つの質問】
1「フルートの魅力と楽器特性」について
質問1・フルートはどんな楽器ですか?持ち味や魅力について教えてください
読みどころ:特徴は音色、表現力の高さ、活躍の場が多いスター性
質問2・フルートの名曲を、『指導曲集名曲3選』で教えてください
読みどころ:①新山さんが最も練習した美しい難曲
②フルートと言えば…の美メロの有名曲
③2楽章が泣けるほど美しい〇風テイストの名曲
質問3・フルートの楽器そのものについて、教えてください
読みどころ:子どもから大人になるまで、楽器はいくつ必要?人気楽器のなかでも、
とても〇〇パが優秀?
2「スズキ・メソードでフルートを学ぶ良さ」について
質問4・スズキ・メソードでフルートを学ばれて、いかがでしたか?
読みどころ:苛酷で楽しいフルートマラソン!とは?
質問5・スズキ・メソードの先生について、教えてください
読みどころ:師匠の中田先生は笑い声が上がるほど楽しいレッスンが評判で、指導技術もすごいらしい
3「グランドコンサート」について
質問6・グランドコンサートに参加されたことはありますか?また想い出はお持ちですか?
読みどころ:演奏するのも聴くのも楽しい大コンサート、そして思い出すのは最後に演奏するあの曲
【質問1】フルートはどんな楽器ですか?持ち味や魅力について教えてください
―フルートに出会った時の気持ちを覚えていますか?
新山さん
小さい頃、音色をぱっと聴いた時に、なんだか素敵だなって直感で感じたところがあるかなと思います。
フルートは、音色がやっぱり特徴的ですね。キラリと光るような音色で、華やかで、それがすごく自分には合っているなという感覚があります。
―フルートの持ち味や魅力について教えてください
新山さん
フルートは息の吹き込み方で表現が多種多様にできるので、歌っているような感じで吹くことができるんですよね。だからこそ幅広い表現力が求められますし、そこがすごい魅力だなと思いますね。ソロもいいですけれど、オーケストラでもすごく活躍できる楽器です。
フルートの特徴は音色、表現力の高さ、活躍の場が多いスター性

―オーケストラ経験はおありですか?
新山さん
高校と大学の時にサークルでやっていました。

新山さんが参加したオーケストラサークルの演奏会
―オーケストラの弦楽器の視点では、管楽器の方って度胸がいるなって思うんです。
1人で音を出す、しかもフルートは曲の中でも目立つ役割で、一番大事なところとか一番高い音とかあるじゃないですか。ああいう目立つ場面では、どういうお気持ちですか?
新山さん
ワクワクします。自分の音を聞かせたいって思いますね。
―素晴らしい。よし来た!って感じですか?美味しいところ来た!みたいな気持ちでしょうか?
新山さん
そうですね。
そういう気持ちになるのも、スズキ・メソードで育ったからだと思います。小さい頃は引っ込み思案でしたが、発表会とかコンサートとかソロで演奏する機会をたくさんいただいて、そこから自然と人前に出ることが怖くなくなって、堂々と自分を表現できるようになったと思っています。
ープロ奏者みたいですね。頼もしい!
新山さん
自分に自信がついたことが、フルートを学んで一番良かったことだなと思いますね。


―フルートは表現方法が多彩ということについて。オーケストラの曲の中でも、お姫様や妖精のようなイメージの、華やかで澄んだこれぞフルート!という音もあれば、重くて気だるいような怪しいムードの音を表現する時もありますよね。
新山さん
そうですね。
―私がイメージした怪しい音の例としてはドップラー(ハンガリー田園幻想曲)とかドビュッシーの牧神の午後(への前奏曲)といった曲ですが、何を変えたら妖精の音から怪しい音になるのでしょうか?
新山さん
気持ちが大事だと思っていて、自分がなりきることですね。もちろん息遣いも口の形も大事ですけれど。
―気持ちで変わるんですか?
新山さん
結構変わると思います。気持ちがやっぱり息にも出ると思います。なりきることで吹けるという感じ。
―なるほど。そうすると歌の方と近い感じがありますね。しかも歌の方は自分の身体が楽器ですけれど、フルートの方はパートナーとしての楽器があって、それが歌を拡大拡張できるっていうイメージですかね。
新山さん
身体も楽器の一部で、この一本の管に命を吹き込むというか。そんな感じで身体全体を使って表現できるのもフルートの魅力ですね。
フルートは気持ちが大事、身体全体をつかって表現できる楽器。

【質問2】フルート科指導曲集における『名曲3選』を教えてください
―フルートの魅力に触れるために、聴くべき曲を教えていただきたいです。名曲はたくさんあるので難しい注文とは思いますが、たとえば指導曲集の中から新山さんがお好きな3曲を紹介していただけますか?
新山さん
これは、答えるのがすごく難しい質問ですが。
1曲目はシャミナーデ作曲のコンチェルティーノです。
指導曲集の中で、群を抜いて一番練習した曲です。夏期学校の協奏曲の夕べに出演した時にも演奏しました。
―その曲は指導曲集の何巻に入っていますか?
新山さん
10巻ですね。
―10巻でしたら、技術的にも難しそうです。最も練習した曲なら想い出も多いでしょうね。
―2曲目はいかがでしょうか?
新山さん
ビゼー作曲メヌエット~アルルの女から、です。アルルの女第2組曲の中の1曲で、オーケストラでもよく演奏される有名な曲です。指導曲集の3巻の最後です。たっぷりとした息遣いが必要だったり、高音のピアノの音色を響かせるのが難しかったり、綺麗に吹くには練習が必要な曲ですけれども、だからこそ技術と表現力、どちらも学べる曲としてすごく名曲だなと思っています。
―もう1曲、あと何を選びますか?
新山さん
めちゃめちゃ考えたんですが、尾高尚忠(おたか ひさただ)作曲のフルート協奏曲を挙げたいと思います。日本の作曲家なので、日本の庭園を感じさせるような日本らしい音階とか旋律が使われていて、独特な雰囲気を持つ曲になっています。とくに2楽章は、吹きながら涙が溢れてくるような素晴らしい旋律で、大好きなんですよね。
最後の卒業試験(研究科C)の課題に私が選んだ曲なので、その当時の達成感とかも含めて思い出に残っています。
―日本の作曲家が出てくるのは意外でしたけど、尾高さんはN響の指揮者でもいらっしゃいましたね。ご子息で現指揮者の尾高忠明さんをはじめ有名なご家族ですね。
そしてスズキ・メソードの課題曲には、様々な名曲が幅広く選ばれていることをあらためて感じました。
【質問3】フルートの楽器そのものについて、教えてください
-フルートを始めるとき、例えば子どもの頃はどんな楽器を使うのでしょうか?
新山さん
私が小さい頃の子ども用楽器は「U字管フルート」と言って、サイズは大人用の「ストレートフルート」とほぼ同じで、吹き口だけちょっと曲がっている楽器でした。ヤマハのフルートでした。
今はより小さなサイズの「幼児用U字管フルート」というのもあるので、それを使っているお子さんもいらっしゃると思います。

新山さんにとって初めての楽器はU字管フルートでした。
子どもから大人になるまで、楽器はいくつ必要?
人気楽器の中でも○○パが優秀?
-その最初の楽器は、何歳くらいまで使いましたか?
新山さん
多分小学校の中学年ぐらいまでは使っていたと思います。
-では今愛用されている楽器はその次ですか?
新山さん
そう、2回目ですね。
-それはいいですね。ヴァイオリンやチェロ、弦楽器は身体の成長に合わせていくつか変えますからね。フルートはドンピシャで自分に合う楽器と出会ったら、もうずっとそれでいける。ちなみに楽器の調整はどんな頻度でなさるんですか。
新山さん
私の場合は、調整は1年に1度ぐらいですかね。頻度は人によって違うのかもしれないです。
-なるほど。あとはコンパクトだから持ち運びが楽そうですね。
新山さん
そうですね。スムーズに持ち運びできるのは魅力ですよね。
―しかも、音を出したら表現力がすごくあるわけじゃないですか。表現が適切か少し微妙ですが、あえて言うと、最近のコスパがいいという言葉にあてはまるなと思いました。
新山さん
そうですね。確かにそういう言葉でクラシックを表現したことは私もないんですけれども、でも、楽器に興味はあるけれども敷居が高いっていう方が始めるのにはすごくいいかなって思いましたね。

フルート科の皆さんと


サイン入りフルートケースの説明は動画(近日公開)でご覧になれます。
【質問4】スズキ・メソードでフルートを学ばれて、いかがでしたか?
―おそらく一般的には、フルート含む管楽器は学校の吹奏楽がきっかけで始める方が多いのではないかなと思います。そのなかで、スズキ・メソードならではの経験があれば教えていただきたいです。
新山さん
スズキ・メソードの特徴として、耳で聴いて覚えるというのがあると思います。楽譜を見る前に音源を繰り返し聴いて覚える教育法ですけれども、そのおかげで自然と表現力が身につくようになったと思います。
それから合奏ですね。ピアノ科やヴァイオリン科チェロ科の方たちと一緒に合奏する機会がたくさんありました。スズキ以外ではなかなかないですよね。フルート以外の楽器と合奏する楽しさを学べたことはすごく良かったなと思っています。
自然と身に付く表現力、フルート以外の楽器との合奏経験は、スズキ・メソードの良さ

アークヒルズ音楽週間2018に出演中のスズキ・メソードの生徒たち
2017年10月7日 サントリーホール前カラヤン広場
http://suzukimethod-flute.com/nakada.html
―スズキではグループレッスンと言って、教室の皆さんで一緒にレッスンする日がありますが、何か思い出があれば教えていただけますか。
新山さん
グループレッスンをする時に、ちょっと過酷なものがあって、通称フルートマラソンっていうんですけれども。
過酷なレッスン、フルートマラソンとは?
新山さん
それは、指導曲集1巻から大体7巻、8巻ぐらいまでの曲をぶっ通しでやり続けるっていうものです。
―1巻から7、8巻までずっと、全曲をですか?
新山さん
全曲を吹くんです。もうすごく大変ですけれど、でも今やっている、練習している曲だけじゃなくて、1巻から練習していたその昔に戻って、こんな曲もあったな、これ大変だったな、みたいなことを思い出すきっかけにもなりましたし、精神力が鍛えられましたね。
―なるほど。大変な長い曲というと、どんな曲がありますか?
新山さん
そうですね、有名な曲だとドップラーのハンガリー田園幻想曲とか、クヴァンツのフルートソナタとか。
1巻とかは全然こんなもんかって感じなんですけど、5巻6巻ぐらいなるにつれて1曲が長いじゃないですか。もう本当に大変ですね。
―皆さんが暗譜していて、こんな曲あったなって思いながらずっと吹いていけるっていうことですよね
新山さん
そうですね。意外と吹けるんですよね。勉強してからちょっと間が空いていても、身体に染みついてるんですね。
フルートマラソンは、スズキの生徒ならではの特徴を活かしたスペシャルレッスン!
―それから、ここまで上手になるにはたくさんお稽古をされたと思いますが、練習はご自分で自らやってらっしゃいましたか?
新山さん
いや、練習は正直嫌いだったんですよ。
―練習嫌いでしたか!
新山さん
もう本当にやりたくなくて。でも、母が毎週欠かさずレッスンについてきてくれて、家に帰ってからも熱心に教えてくれて。1日練習しないと3歩下がる、3日後退するみたいなことを言われながら、毎日練習していました。
―毎日練習したのは立派ですね。
風邪の時も、旅行に行くときも持って行って現地で吹いていました。
練習が嫌いで叱られて、泣いて。それでも母は教えてくれましたね。
―お母様もご立派ですね。そしてフルートがお好きなんですね。
新山さん
好きだと思いますね。母はクラリネットをやっていたこともあるんです。本当に熱心に教えてくれました。音楽はレッスンだけじゃなくて、家に帰ってからの反復練習が一番重要だったりすると思いますが、自分ひとりじゃ絶対できなかったと思います。両親と先生に支えられて、いろんな経験をさせていただいて、今があると思いますね。

【質問5】スズキ・メソードの先生について教えてください
子どもの時から師事している中田先生をはじめ、夏期学校やコンサートなどでお世話になったスズキ・メソードの指導者の先生方は、技術や表現力といった音楽面だけではなく、人として成長させてくれるような指導をしてくださいました。人生の教訓だったり、礼儀とか人との関わり方だったり、生きていく上で大切なことを教えてくださるような温かい指導でした。そのような環境でのびのびと音楽を学べるスズキは本当に素晴らしいと思います。
―最初から、先生方が泣いて喜ばれそうなお話をありがとうございます。
それから、中田先生は教えるのがとても上手という評判をお聞きしているんですが、どんな指導をされるのかエピソードで紹介していただけますか?

中田先生と新山さん

フルート科創始者髙橋先生と中田先生と3人で
師匠の中田先生は笑い声が上がるほど楽しいレッスンが評判で、指導技術もすごいらしい
新山さん
そうですね。中田先生の演奏表現の指導について紹介します。
例えば、曲の中で一番盛り上がる箇所があって、それに向かって進んでいくようなフレーズがあったとします。1回目の盛り上がり、2回目の盛り上がりで、最後3回目の盛り上がりで一番盛り上がりたいっていう表現があった時、先生は食べ物で例えていて。2回目で豪華なものを食べちゃうと、3回目で感動が薄れてしまうみたいな。
なので、1回目はコロッケ、2回目もコロッケ、そして3回目はもう豪勢にステーキ!
「ここはコロッケ、コロッケ、ステーキだから」みたいな例え方は、結構してくださいます。
曲の盛り上がり方を例えると、「コロッケ、コロッケ、ステーキ」
―わかりやすいですね。まだステーキ早かったか!みたいな。
新山さん
そうなんです。2回目ステーキになっちゃったか、みたいな。
子どもの時でも、食べ物とか身近なことに例えてくださることによって、小さいながらもすごい腑に落ちる。うん、確かにステーキ2連続はきついわ、なるほどね、みたいな感じですね。
(イラスト)
―おもしろいですね。私も中田先生のレッスンを受けてみたいなって思いました。ありがとうございます。


楽しそうなレッスン風景
【質問6】グランドコンサートに参加されたことはありますか?また想い出はお持ちですか?

―今回の企画はグランドコンサートの開催を広くお知らせすることが目的のひとつです。新山さんは参加されたことはありますか?
新山さん
毎年のように参加させていただいていました。グランドコンサートはスズキの中でも一番大きなコンサートだと思っていますが、本当に大勢の仲間たちと一緒に合奏しますよね。フルート科の合奏もそうですけれど、他の科の合奏を聴いている時間もすごく楽しいし幸せなんですけれど、やっぱり一番思い出に残っているのは、最後の鈴木鎮一先生作曲のきらきら星変奏曲。本当にみんなで演奏するので、その瞬間はみんなの心がひとつになった感動がありました。
―おっしゃるとおり、大きな会場が音でいっぱいになる感じ、幸せですよね。
コンサートを体感するっていう経験を、ぜひ多くの方にしていただきたいです。
新山さんもぜひまた会場にいらしてください。
読者の皆さまへ(グランドコンサート実行委員会よりお知らせ)
「奏でる人にかえろう」をコンセプトに、OBOGの皆さまへ、コンサートへの出演を提案しています。
グランドコンサートの象徴である壮大な響きの渦を創り出すためにも、一人でも多くの卒業生にご参加いただきたく、お待ちしております。公式サイトOBOG参加登録フォームより申込ができます。
参加登録期限: 2026年3月25日(水) https://grandconcert.suzukimethod.or.jp/
―あらためまして、本日は素敵なお話をたくさん聴かせていただきました。新山さんのお話で、フルートの世界により親しみを感じる方が増えることと思います。
それでは、こちらでインタビューを終わらせていただきます。
本日はどうもありがとうございました。
(聞き手:服部享子 第55回グランドコンサート実行委員会)